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(AMS鑑定通信 2025年夏号から)
1.令和7年版土地白書
国土交通省が5月27日に令和7年版「土地白書」を公表しました。
土地白書は、3部構成であり、①土地に関する動向、②令和6年度土地に関して講じた基本的施策、
③令和7年度土地に関する基本施策、を整理しています。
①土地に関する動向では、3月下旬に公表された地価公示結果を紹介する一方、
令和6年の土地取引件数は全国で約132万件でほぼ横ばいであること、
海外投資家による不動産投資額は、令和6年で約9397億円となり、前年から約63%増えているものの、
国内投資額全体に対するその割合は約17%でほぼ横ばいであること、オフィスビルの賃料は上昇傾向が続き、
空室率は下落していると発表しています。
また地域経済・産業を活性化する土地利用の具体例として、
北陸新幹線延伸で注目される福井県敦賀市の敦賀駅西地区に整備された
複合施設「TSURUGA POLT SQUARE『otta』」、
地域の風土を活かした土地利用の具体例として、
山形県庄内市で2018年に開業したホテル「SUIDEN TERRASS」及び教育施設「KIDS DOME SORAI」を紹介しています。
このホテルはもともと観光地ではなかった田園地帯に、田んぼに囲まれたホテルと子供向け遊び・運動施設を併設して
地域住民向け拠点としての機能を付与し、年間約6万人の宿泊数を数えるとのことです。
類似事例として、大和ハウス工業が開発した森林住宅地「ロイヤルシティ阿蘇一の宮リゾート ASONOHARA」
(阿蘇くじゅう国立公園内の約36,000㎡の敷地に29区画の宅地配置)を掲載しています。
これは生物多様性確保の観点から、過去に植林が行われていた場所を樹林エリアと草原エリアに分け、
環境整備を進めているそうです。
マスメディアの報道は都心部のタワーマンションや新たな商業施設に的を当てがちですが、
日本全国各地で様々な取り組みが行われていることを実感します。
③令和7年度土地に関する基本政策では、石破首相の看板政策である「地方創生」、
「災害に強いまちづくりの推進」のキャッチフレーズが目立つ外、
「農地・森林の適正な保全」や「環境保全」、「適正な土地管理」、
「所有者不明土地問題への対応」などが掲げられています。
白書からも土地の二極化傾向が顕著であることがわかります。
2.地価公示住宅地全国上昇率1位地点
今回の地価公示で、住宅地全国上昇率1位となったのは、
北海道富良野市の「富良野-4」(65,000円/㎡、前年比+31.3%)でした。
4月末に地価上昇傾向が著しい富良野市北の峰地区を見て来ました。
別荘やコンドミニアムなど海外からのインバウンド需要が増加し、街並みも大きく変化しつつあります。
北の峰地区は富良野スキー場へと続く北の峰通りを挟んで左右に住宅地が形成されています。
北の峰通りには今後建設されるホテルなどの看板が目立ち、その背後にはコンドミニアムや外国人向け宿泊施設が散見されます。
このエリアは古くからの居宅も少なくなく、ゴミ出しルールの徹底を呼び掛ける英語・中国語などの掲示板も目を引きます。
インバウンドによる地価上昇が早かったニセコが新規の外国人向け専用エリアの色彩が強いのに対して、
北の峰地区は地元居住者との共存が今後の課題であるかのような観を受けます。
海外からの不動産投資は日本経済にとって欠かせないものになっています。バランスをどう取っていくのかが問われます。
(AMS鑑定通信 2025年春号から)
1.全国新築分譲マンション市場動向2024年
株式会社不動産経済研究所が全国新築分譲マンション市場動向2024年を公表しました。
それによると全国の発売戸数は59,467戸(前年比8.6%減)です。
前年に引き続き3年連続の減少となりました。
地域別に見ると、首都圏14.4%減、近畿圏1.6%減、東海・中京圏1.0%減です。
三大都市圏以外は以下のとおりです。
2023年前年比2024年前年比
全国 65,062 -10.8%59,467-8.6%
北海道 1,574 -26.3%1,362 -13.5%
東北 1,656-43.8%1,952 17.9%
関東(首都圏以外) 1,461-25.4%1,355 -7.3%
北陸・山陰 617 12.4% 422 -31.6%
中国 2,83644.7% 2,256-20.5%
四国 405-65.9% 79796.8%
九州・沖縄 8,111-4.0% 7,103-12.4%
東北地区と四国地区が増加していますが、これは前年の大幅減による反動とみるべきでしょう。
全国的にマンション供給戸数は減少しています。新築マンションは建築される場所が極めて限定的
(都心部・主要駅近など)となっており、マンション価格が上昇する要因の一つといえます。
戸当たり平均価格は6,082万円(前年5,910万円)、8年連続の上昇、
1平米当たり単価は11年連続の上昇を示しています。全国売主別発売戸数上位は、
1位が野村不動産3,584戸、2位プレサンスコーポレーション3,230戸、3位三井不動産レジデンシャル3,089戸と続きます。
マンションの価格上昇はいつまで続くのでしょうか。
2.建築費上昇
国土交通省は1月31日、2024年建築着工統計調査を公表しました。
これは全国の自治体に提出される建築確認申請をとりまとめたものです。
2024年の新設住宅着工数は792,098戸、前年比3.4%減です。
新設住宅着工床面積は60,869千㎡、前年比5.2%減となっています。
住宅分類別では、持ち家218,132戸(前年比2.8%減)、貸家342,044戸(同0.5%減)、
分譲住宅225,309戸(同8.5%減)〔内、マンション102,427戸(同5.1%減)、
戸建121,191戸(同11.7%減)〕などとなっています。
建築確認申請には工事費予定額を記入します。
統計資料では全国、各都道府県単位で用途別・構造別に延床面積総数、工事費総額が記載されます。
工事費総額を単純に延床面積総数で割り戻したみると建築費(予定額)の上昇が進んでいることがわかります。
(単位:万円/㎡)
RC造 2021年 2022年 2023年 2024年
全国 26.51 27.27 29.42 33.37
東京 32.43 33.44 36.78 42.57
予定額なので実際に企業が計上するコストとは相違があり、多少の誤差が生じる可能性はあります。
これ以上、建築費の上昇が続けば、どうなるのでしょうか。
(AMS鑑定通信 2024年冬号から)
1.岐路にあるマンション相場
都心部を中心に価格高騰が伝えられるマンション取引価格ですが、最近、状況に変化が生じつつあるようです。
株式会社東京カンテイのデータによると、ここ3年間の新築マンション分譲戸数は以下の表のとおりです。
2021年2022年2023年
東京都25,79823,79220,020
大阪府11,93410,8098,834
愛知県 6,991 7,2455,105
分譲戸数の減少が続いていることがわかります。こ
の傾向は首都圏では続いており、9月20日付日経新聞では、首都圏マンション発売前年同月比50%減で728戸にとどまり、
5カ月連続の減少であることが報じられています。
11月12日付日経新聞では、「中古マンション、上昇相場に陰り」と題し、
中古マンションの価格が軟調(下落、やや下落)である都道府県が15に増加していると記載しています。
地方では、所得水準が大都市部と比較して高くなく、マンション価格が上昇すると戸建住宅と競合すること
(マンション価格が高くなり過ぎている)、及び物価高による資金的な余裕がなくなっていること、
更に将来の金利動向をその要因と挙げています。
他方で同じく11月22日付の記事では、「中古マンション、東京・千代田は2億円に迫る、都心独歩高」との見出しで、
同じ首都圏でも都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)は10月の中古マンション平均希望売り出し価格が
前月比2.9%高の1億3800万円であるのに対し、神奈川県△0.3%(3644万円)、埼玉県△0.9%(2886万円)、
千葉県△0.6%(2696万円)と二極化を示しています。
その前の11月19日付の記事では、「都内駅近マンション急騰「徒歩5分以内」10年で価格2倍」と報じています。
資産性が高いマンションがどのようなものであるかよくわかる内容です。
デベロッパーにとっても、高く売れるマンションの立地は知り尽くしています。
そのような立地で面積がまとまった土地はそう簡単に市場に出てきません。
どうしても高額で土地を仕入ることになるので、マンション販売価格も高くなる面があります。
名古屋市及びその周辺でも状況はほぼ同じで、昨年夏以降、中古マンション販売価格は中心部は比較的堅調であるのに対し、
周辺部では下落が伝えられています。価格上場が顕著であったマンション販売価格もこの先、十分な注視が必要と思われます。
2.熊本県地価上昇
令和7年の地価調査では商業地上昇率全国上位を熊本県の大津町と菊陽町の地点が占めました。
1位:大津5-1(120,000円/㎡、33.3%上昇)、
1位:大津5-301(88,000円/㎡、33.3%)、
3位:菊陽5-301(110,000円/㎡、32.5%)、
5位:大津5-2(70,400円/㎡、28.0%)などです。
先日、これらの地点を見てきました。
大津町及び菊陽町は熊本市の北東部から東部に位置し、阿蘇くまもと空港の北方に位置します。
菊陽町に台湾の半導体メーカー「TSMC」が進出し、既に第1期工事は完了、現在第2期工事が行われています。
従業員やその家族を含めると3千人近い人が台湾から来る(来た)と言われます。
もちろん日本人従業者も今後、大きく増えることが確実であるため、周辺ではホテル、分譲・賃貸マンション、
戸建住宅の建築が進んでいます。既存のアパートも家賃上昇しています。
半導体関係では北海道・千歳のラピダス新規進出による地価上昇も話題となっています。
日本の北と南で同時に同じ事情で地価上昇していることに驚きます。
JR九州の豊肥線に乗って最寄駅を降りると、駅の通路に台湾人向けの不動産広告が掲げられています(中国語繁体文字)。
文面には福岡の物件を紹介するとあり、熊本在住の台湾人に対して、人気がある福岡物件を勧めています。