最新情報

(AMS鑑定通信 2019年春号から)
1.増賃(ゾウチン)
短期地価動向の通り、大都市圏を中心に地価上昇が続いています。つい先日は「いざなぎ超えの好景気持続」と報道され(実感はわきませんが)、日本経済の好調さが強調されます。不動産市況で強気姿勢が目立つ中、ビルオーナー(家主)からテナント(入居者)側に増賃(賃料値上げ)通知を発したり、増賃交渉を行うところが目立つようになりました。不動産鑑定士に「適正な賃料」を鑑定評価書で提示して欲しいと依頼が来るケースも増えてきています。業界ではいつのまにかゾウチンが流行語になっている観すらあります。

 

数年前まではテナント側から家主に賃料減額交渉(減賃)する方が多かったので、世の中は短い期間で様変わりするものです。「適正な賃料」を求める場合、不動産鑑定評価上は、「新規賃料(正常賃料)」と「継続賃料」の二つがあります。新規賃料は、今、対象物件を新規に賃貸に供した場合に得られる適正賃料です。
一方、継続賃料は特定の当事者間で、過去に締結した契約賃料を前提として、現在に至るまでの期間にどのような経済的変動等があったかを勘案して、改定すべき賃料を求めるものです。通常、賃料には硬直性があるため、経済指標ほどには賃料は上昇しないのが一般的です。もっとも最近の地価高騰で都心部では土地固定資産税等が大きく上昇しているのは間違いありません。当事者間で法的な争いが発生した場合には、裁判所は継続賃料の考えを重視します。

 

但し、家主が入居者に対して、今、賃貸に供した場合に市場で成立する賃料相当額を示して、増賃交渉することは自由です。家主も景気の良い間に資本投下部分を回収しなければ割に合いません。名古屋に限定すれば名駅地区はオフィスの空室率は過去最低水準であり、伏見・丸の内に新規テナントが流れている傾向が顕著です。店舗も飲食店を中心に出店需要は相変わらず多く、人気エリアでは空きが出るのを待っている状況です。最近は理論武装しないとなかなか交渉はうまく運びません。増賃をお考えならば、是非、弊社に声をおかけください。

 

2.特定生産緑地
かつてバブル経済により地価が高騰、市街化区域内農地の宅地転換・供給を目的に生産緑地法が改正、平成4年、多くの市で生産緑地指定が開始され、あと3年で満期の30年を迎えます。満期の30年を迎えると多くの地主が生産緑地買取申出を行い、一挙に宅地供給が増加するのではないか(2022年問題)との懸念がありましたが、一昨年の生産緑地法改正で、「特定生産緑地」制度が導入されました。生産緑地満期前までに現在の生産緑地を特定生産緑地として申請し、認可されれば10年間、生産緑地が継続されます。

 

最近、特定生産緑地に指定した方がよいのかどうか悩んでいる地主さんが増えています。今後10数年間は農地経営を続ける方針であれば、特定生産緑地申請するのも良いと思います。但し、農業経営者が心身共に健康でなければなりません。最近は認知症その他により問題を抱えるケースが増えているからです。

 

確かに主たる農業従事者に精神疾患が生じた場合でも生産緑地の買取申出事由(解除)に該当するでしょうが、宅地化して建築物を建設しようにも、土地を売却しようにも所有者の意思能力が低下している場合には、取引そのものが困難となります。

 

昨年は、都市農地貸借円滑化法も施行され、一定の条件に従えば、生産緑地のまま農業法人等に農地を賃貸することも可能となりました。その意味では生産緑地を維持し続けるハードルが低くなったのも事実です。

 

人口減少等により宅地化スピードが落ちているエリアがある一方、逆に人口集中により土地の高度利用化が進展しているエリアもあります。特定生産緑地申請は来年早々に受付開始となる見込みです。的確な判断が迫られています。

 

 

(AMS鑑定通信 2018年冬号から)
1.配偶者居住権
民法等の一部を改正する法律が7月13日に公布され、新設された「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」が遅くとも2020年7月までに施行されることになりました。民法改正に当たっては、高齢化社会の進展や家族のあり方が変化したことに対応して、相続開始時に居住建物に残された配偶者の居住権をどのように保護するかが問われたようです。

 

配偶者は法定相続分が優遇されているので、個人的には配偶者の居住権を保護する必要性をあまり感じたことはありません。しかし、遺産分割の現場では、相続財産の過半を居住用不動産が占めている場合に、配偶者が居住用不動産を相続してしまうと、他の相続人との関係から金融資産を相続できなかったり、代償金の発生など不利益を被ることが少なくないとのことです。

 

配偶者短期居住権は、被相続人所有の建物に居住していた配偶者が、遺産分割完了までの時期まで無償で居住する一時的な権利であり、評価上も問題となることはないと思われます。配偶者居住権は、配偶者以外の相続人が配偶者が居住していた建物を取得した場合に、配偶者が終身(または一定期間)、無償でその居住用建物の全部を使用することができる権利です。この配偶者居住権は、原則として登記され、また譲渡不可とされます。

 

配偶者居住権をどのように評価するのかがクローズアップされています。相続税財産評価上は、現行の「借家権」が事実上評価0(取引慣行となる地域のものを除いて)であること、配偶者居住権が単なる使用借権であり譲渡性がないことを勘案すれば、0である可能性が高いと判断されます。

 

他方で、配偶者居住権付家屋や配偶者居住権付家屋の敷地の評価は、現行の「貸家」あるいは「貸家建付地」に準じて、「借家権」を「配偶者居住権」に置き換えて、評価することになるものと推測されます。配偶者居住権割合がいくらになるのか?2020年税制改正までには国税庁は公表しなければなりません。今後、各方面から予測がされることでしょう。昔の感覚で言えば、配偶者居住権を創設しなければならないほど、母子で遺産分割争いする時代となったことに少々驚いています。

 

2.住家被害認定(その2)
先日、住家被害認定調査に関する研修を受けてきました。主な題材は2年前の熊本地震、今年の大阪北部地震、西日本豪雨、そして9月の北海道胆振地震後に実施された現場調査の報告と、実際に使用した調査シートです。前号で記載したとおり、自宅が被災した方にとっては、罹災証明書がないと公的な支援はほとんど受けられません。罹災証明書を受け取るためには住家被害認定調査に基づいて、その程度(全壊、大規模半壊、半壊等)を証明しなければなりません。

 

1次調査は外観のみ(基礎、外壁、屋根)です。1次調査で不服がある場合は、内覧調査(2次調査)に移行します。2次では、柱、天井、内壁、建具、設備も対象に含まれます。調査は部位別に、被害の程度(無〜5)及びその範囲(全体の割合)を客観的に拾い出していき、その場で調査シートに記入、その後、災害本部に持ち帰り、集計します。

 

内閣府準拠の調査シートは、一部がマークシートになっており、システム化が図られています。ほんのわずかな違いで無被害、半壊と判定結果が異なります。被災者にとっては受けられる支援の内容に大差が生じます。不公平感の生じないように客観的で確実なデータを残さなければなりません。災害大国日本はこのような場面でもシステム化が進んでいることに驚きました。また評点の付け方も「進化」しており、建物基礎の被災判定はより慎重かつ重要項目となっています。これは熊本地震の教訓だそうです。

 

 

(AMS鑑定通信 2018年秋号から)
1.都市農地貸借円滑化法
都市農地の賃借条件を緩和して農地利用継続を促進する「都市農地の貸借の円滑化に関する法律(都市農地貸借円滑化法)」が6月20日、衆議院で可決成立、9月1日から施行されます。

 

これまで農地を賃貸するには農地法第3条(農業委員会の許可)が必要であり、いったん第三者に賃貸すると、農地法第17条(法定更新)の適用を受け、賃借人に強固な権利が発生するため、農地賃貸借はなかなか進みませんでした。都市農地貸借円滑化法により、生産緑地に指定された区域内にある都市農地に関しては、一定の事業計画を策定し、市町村長の認定を受ければ、農地法3条と17条の適用を受けません。主として農業法人等の利用を想定し、生産物の一定割合を地元直売所などで販売することや、都市住民や学童の農業体験の場、あるいは防災空間などとしての活用が考えられます。都市農地の所有者にとっては、農地を安心して賃貸できるだけでなく、賃貸に供した場合でも相続税の納税猶予制度が受けられる点が画期的なポイントです。

 

すでに生産緑地に関しては昨年の法改正により特定生産緑地制度の創設(指定後30年経過した農地について特定生産緑地として再指定すれば期限10年延長)や、条例で面積要件を縮小することができるようになるなど、生産緑地指定満30年を迎える2022年に向けての対策が進んでいます。今回の円滑化法制定もその一環です。

 

実務面では相続税の納税猶予を受けた場合の猶予期限について取扱いが変わったことに注意が必要です。円滑化法施行により、生産緑地に相続税納税猶予制度を適用すると、農業相続人の死亡の日までが猶予期限となりました(これまでは三大都市圏の特定市(平成3年1月1日時点)に限定)。

 

2.住家被害認定
6月18日、大阪北部地震が発生、万を超す家屋に被害が生じました。それから間もなく7月上旬には西日本一帯が広く豪雨災害に見舞われました。地震、土砂災害、浸水、津波など自然災害はいつ、どこで起こるかわかりません。

 

災害発生後、被災者に対しては公的私的を問わず、様々な支援が実施されます。その際に必要なのが罹災証明です。例えば、税金、国民健康保険料の減免、被災者生活再建支援金の支給、これらは罹災証明書に記載された被害の程度によって、受けられる支援金の金額が異なります。罹災証明書があると優先的に仮設住宅や公営住宅に入ることも可能です。 

 

罹災証明書の発行のために実施するのが住家被害認定調査です。これは原則、行政が行います。しかし災害時に行政マンは被災者支援を優先しなければなりません。どうしてもマンパワーが不足します。そこで不動産鑑定士が住家被害認定調査を手助けしようという機運が生まれました。日本不動産鑑定士協会連合会に対して国土交通省から住家被害認定調査への支援協力要請が届いています。現在、岡山、広島、愛媛各県で同様に認定調査に不動産鑑定士が関わっています。

 

私も住家被害認定調査に関する基礎的な講義を受けてきました。半壊・大規模半壊・全壊を判定するために屋根・外壁・基礎を外観から客観的にどのように被害認定するか(第1次調査)がテーマです。「下げ振り」を使って傾いた柱や壁の角度を測ったり、壁面の損傷割合などを判定します。どうしても判断する人によって判定にバラつきが出てくると感じました。幸い、愛知県では大きな災害が長らく起きていません。住家被害認定調査に出向くことがないよう祈るばかりです。

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